しろくま

千羽づるのしろくまのレビュー・感想・評価

千羽づる(1989年製作の映画)
3.6
2022.08.15/171/GYAO
〝禎ちゃんにも折り鶴の配給。どれがいいかねえ〟〝きれいじゃねえ。ありがとう〟〝禎ちゃん、鶴を千羽折ると病気が治るんじゃと、鶴は長寿の鳥、長生きする鳥じゃけんね〟

本作は、広島の平和記念公園の〝原爆の子の像〟のモデルの佐々木禎子さんの物語。禎子さんは、爆心地から1500メートル離れた楠木町で、2歳半の時に被爆。原爆の爆風で住んでいた家は倒壊したが、幸いけがもなく、元気で活発な少女に成長。映画の前半は、修学旅行や運動会など、クラスメイトとの楽しい学校生活が描かれている。かけっこが速いクラスの人気者の禎子さんだったが、10年後の小学校6年生の時に突然白血病と診断され、8か月間の入院生活に入る。闘病中に、名古屋の女子高生が原爆症の患者さんのために折った鶴をもらった禎子さんは〝鶴を千羽折ると病気が治る〟と信じ、薬の包み紙や包装紙などで1,300羽以上の鶴を折り続けるが、1955(昭和30)年10月25日に短い生涯を終え亡くなった。映画の後半、徐々に衰弱して、介助なしでは移動できなくなる姿は痛ましい。

原爆の熱や爆風で多くの人達が亡くなったということは知っていても、何年も経ってから、突然発症する原爆症については、あまり理解されていないのではないだろうか。広島の原爆資料館で、薬包紙で作られた禎子さんが折った鶴を見たことがあるが、原爆が投下されれなければ、彼女があんなに苦しんだり、命を落とすことはなかった筈。もう二度と同じ悲劇を繰り返してはならない。

終戦の日に、戦争や平和について考えるきっかけになるお勧めの映画。そして、広島や長崎を訪れる観光客や平和学習をする子ども達に観てほしい映画。
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