仁

東京兄妹の仁のレビュー・感想・評価

東京兄妹(1995年製作の映画)
3.4
本当に何も起こらない、一瞬ゆらぎのようなものがあるだけの日々。商店街で買い物をする庶民、静かな明かりが灯る街。

演出的にはいつもの市川準スタイルで染みるなぁ〜と思いつつも、兄の妹に対する態度が酷すぎてノレなかった。ご飯ぐらい自分でよそえ、食器ぐらい片付けろ、時計ぐらい直せ...生活費を工面しているのをいいことに妹の人生を完全に支配しているのが気持ち悪ぅてしゃあない。

妹は彼氏(まさかの手塚とおる)が出来たことでその支配から逃れるが、根本は同じで男に尽くすだけの生活...案の定別れたけど。

でも恋愛を通過したことで大人としての態度を表明し始めた妹を兄はなんとか飲み込む。一人の人間として認識しようともがく。玄関で踵を返すラストシーンはそういった心情を意味しているのではないかと僕は解釈した。これは超絶モラハラ兄がほんのちょっと成長する映画なのだ。

【市川準の昭和フェチ、いかつい】
隣のオバチャンが「ごめんお醤油貸して〜」って、90年代でその描写は流石に厳しいでしょう。徹底した懐古趣味で微笑ましい。
仁