あなぐらむ

やくざ先生のあなぐらむのレビュー・感想・評価

やくざ先生(1960年製作の映画)
3.6
北原三枝の引退目前、「天下を取る」の後となる一本。
即ち戦災孤児の元やくざ者(裕次郎)が孤児院の先生としてやってくる青春編なのだが、専ら成長するのは裕次郎の方、というのが日活流。
山田信夫のホンは彼らしい戦争の傷痕(後年の「銀座の恋の物語 」に同じようなフラッシュバックをもたらすシーンがある。混血の少年が描かれてもいる)を主題とし、宇野重吉と芦田伸介の二人の”父"(恩師)が若くて真っ直ぐな青年教師を支えていく。男ばかりの集団生活の青春描写、必ず更生できるとは限らないという現実、貧しさの前にくじけて行く若者の姿は「上を向いて歩こう」にも転じて行く。
硬派な松尾昭典の演出はこの若い不良少年達を魅力的に点描しながら、それを映す裕次郎のナイーブな感性も同時に惹き立て、小気味よい。
※日活後期に頭角を現し、ロマンポルノの常連となる五條博さん渾身の演技も見られます。
北林谷栄のおばさんもよい味のコメディリリーフ、北原三枝は安定のツンデレ(デレは無いか)芝居で裕次郎を支えている。しかしやっぱり色気がない。だがそこがいい。
孤児院の美術は木村威夫が担当、物語のラストから逆算した、しっかりとした作り込みは見事。1960年東京下町の風情も楽しめる。