28歳で惜しくも戦死した天才・山中貞雄監督の現存する3作のうちの1作『丹下左膳餘話 百萬両の壺』は、百万両のありかが隠された“こけ猿の壺”を巡って、様々な人間模様が展開する傑作中の傑作だ。
そのテンポ良いストーリー、片目片腕の剣豪・左膳の魅力あるキャラクター、お藤のツンデレぶり、洒落た台詞やオチなど全てが完璧、筆者も愛する傑作を色鮮やかにリメイク。
本作を鑑賞した次の日に直ぐ様山中版を再鑑賞したところ、全編の脚本(台詞) は殆ど変えずにそのままで、唯一アレンジされた冒頭と差別化を図ったラストは本作オリジナルとして悪くはない。
しかし、オリジナルを越えることは到底難しく、ちょび安に「おじちゃん、良い映画を観ると唸るんだね!」と云わせるまでにはいかず…。
残念ながら本作の鑑賞は、山中版を再び観たいと思わせるきっかけとなり、双方を見比べた結果、改めてオリジナルの偉大さや痛快さを再確認する足掛かりのような印象だけが残ってしまった。
江戸は広く、10年かかるか、20年かかるか分からない壺探し。
だが、本作の魅力を探す再鑑賞の日はそう遠くはないだろう。
次回は山中版にとらわれず、津田版あるいはトヨエツ版・丹下左膳として、素直に楽しみたいと思う。
198 2020