近本光司

アエリータの近本光司のレビュー・感想・評価

アエリータ(1924年製作の映画)
4.0
妻の浮気をうたがう夫が突如として囚われる火星人たちの夢。現実と夢の境目は融解し、火星の女王アエリータはいつしか妻と重ねられ、火星でも奴隷たちによる社会主義革命が企てられる(”Socialistes soviétiques de Mars”!)。嫉妬に狂った夫による二たびの殺人。宇宙から届いたメッセージは米国の資本主義をしめす記号にすぎなかった。見紛うべくもないソ連のプロパガンダ映画だが、十月革命から数年後のソビエトがもっていた想像力には目を見はる。メロドラマの成分はトルストイの原作からだろうか。ニューヨークやパリの映像を火星の女王に見せ、「地球人たちがやってるみたいに手を腰に当て、唇を重ねて…」といわせしめるロマンチズムよ。111分の音楽付きデジタル版上映。