ゆず塩

若草物語のゆず塩のネタバレレビュー・内容・結末

若草物語(1933年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

※字幕が色々と間違っているので、会話に違和感を結構感じる。最初に見る若草物語としてはお勧めしない。

【総括的な感想:『若草物語』と『続・若草物語』を時系列に沿って映像化した作品。】
原作は『若草物語』『続・若草物語』『リトル・メン 第三若草物語』を読了済み。
映画は『ストーリーオブマイライフ 私の若草物語』(2019年)、『若草物語』(1994年)、『若草物語』(1949年)を視聴済み。
これらのネタばれも若干あるので注意してください。
2019年版が好きすぎるので、どうしてもそちらと比較してしまう。

【感想】
私としては、若草物語の映画で4本目に見た作品。1949年版は今作を、リメイクしたのだとよく分かる。リブートではなく、リメイク。1949年版の脚本家の名前に、今作の“サラ・Y・メイソン”と“ヴィクター・ヒアマン”の名前があることからそれは明らかでしょうけども。物語もそうだけど、家の間取りとか、画面の構図とか、色々とそっくり。今作にしかないシーンもあるけどね。
2019年版が今作から発想を広げている点も見て取れて良かった。冒頭の、マーチ夫人が戦争で息子を失った父親におまけを付ける所は2019年版にも使われてましたね。(家の間取りは2019年版もほぼ同じかな)。

ジョーを演じたキャサリン・ヘプバーンの演技が良いと言うか……ジョーというキャラクターを作り出したんだなって思いました。スカートをつまんで走る姿はもはやジョーのアイコン。あの姿はやはり素晴らしくジョーと言うキャラクターを描いていると思う。
ただやっぱり後半のジョーは大人しくなりすぎのような気がするかな。前半のジョーの方が魅力的。それはおそらく、ジョーが大人になっているからで、子ども時代の自由さを失っているからなんだけども。あと、脚本上の都合ってこともあるかもしれないが。
2019年版だと、そうした過ぎ去った子ども時代に哀愁を感じている作りにしているんですよね。
人によっては今作を見て「ジョーも大人になってしまったな……」と感じる人もいるかもしれないが。自分はそこまで頭が回らなかったな……。

ベスのピアノが壊れている描写はあってよかった。他の作品だとそうした描写無かった気がしたので。ローレンス氏からピアノをプレゼントされて嬉しい理由も辻褄が合う……。が、その辻褄を合わせる必要が本当にあるのかは不明。他の見たときにそこまで気にならなかったからなー。

4人のキャラクターがそれぞれ違うのはハッキリしていますね。でも、テーマ的なまとまりがないのかな。あと、物語のドラマに関与しなかったり。2019年版はテーマ的なまとめ方が上手くて、「キャラクター」「テーマ」「物語の構造」が全部合致したときに作品のパワーがとても強くなるんだなって感じました。
今作の段階だと、女性の結婚事情について「経済的」「職業的」理由の言及はほぼ無いですしね。

あと、4姉妹とローリーの掛け合いやドラマが少ないような気はする……かな。エイミーがジョーの小説を燃やす展開はないし。メグが他所に行って羽目を外してローリーに呆れられる展開も無いし。大人のエイミーが、ジョーに振られて腐ってるローリーに呆れる展開も無いし。ローリーとジョーについてしか描けていないと言う気がした。4姉妹の違いは見えるけど、ちょっと物足りない。

ローリーの残念な感じって、しっかり描く必要があるんだなってちょっと思った。2019年版以外のローリーって、ちょっとよく分からなくて、「明るい良い奴」ってな感じ。でも、ジョーに振られると結構酷い言葉を吐いてどっか行っちゃって……イメージがフワフワしている(2019年版に引っぱられすぎなのかもしれんが)。

あと、セリフが多いかな。舞台っぽい。野外でフルカラー撮影できる現代と比べるのは変だが、キレイな風景とかで画面がもつのは現代の強みなんだろう……。モノクロでもそうしたシーンがある映画はあるとは思うけど。

統括すると、キャラクターは生き生きと描かれていた。一方で登場人物の日常を映すシーンが多いかな。原作がそうだから、そこに文句を言うのはちょっとお門違いな感じもある。でも、映画としてまとめあげるなら何かしらのテーマが必要だった、ってことかなー。キャラクターを切り取る視点を決めると言うか。
2019年版は、切り取り方が『大人時代と子供時代の対比』って感じだから重層的に楽しめた、って所か……?
ゆず塩

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