マンスリーヒッチコック、今月は最後から2番目の監督作品「フレンジー」。
今回初鑑賞したのだけれど、長年のハリウッドから故郷イギリスに戻り、ロンドンを舞台にお得意の「巻き込まれ型サスペンス」へと原点回帰した佳作だった。
イングランドの俳優さんたちを使っているので、アメリカで超有名どころを贅沢に使いまくった時の華やかさは、無い。
しかしながらスター然としたキャラクターではないからこそのリアリティや、行く末の不透明感が逆にサスペンス性を高め、イギリス時代のヒッチコックを懐かしむように楽しめた。
刑事さんとその奥さんのシニカルなやりとりはいかにもヒッチコック的ユーモアにあふれ、ジャガイモを小道具とした一連のプロセスはお見事すぎて愉快極まりない。
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お話もやっぱりいつものヒッチコック節。やってないのに逃げるからどんどん立場が悪くなるというお約束。警察に睨まれるととにかく逃げ出す主人公はこれで何人目だろうか笑
何作も観るたびに、ヒッチコックがいかに国家権力を信用していないかをあらためて思い知らされる。
もちろん技巧的なカメラワークも健在で、特に殺人シーンを見せずに引いて引いて雑踏にかき消されていく長回しは絶品。
ここだけでも見る価値が充分にある。
昔と違うのは、殺人や、レイプ、裸などのシーンがずいぶんと直接的で過激に描かれている。(ただし元妻役のおっぱいはボディダブル)
1920年代から撮っている変態監督にしてみれば、この50年はヘイズコードとの闘いだったのかもしれない。逆にもし監督があと20年活躍していたら、どんなとんでもなくエロティックな映画が生まれていたのだろうか?!…
そんなことを思わせてくれるほど、キッチュで刺激的な良作だった。大満足。