髪の魔力
女優ルチア・ボゼーとマリア・グラツィア・フランチャ
ジュゼッペ・デ・サンティス
「オリーヴの下に平和はない」
傑作でも何でもない1950年製作のイタリア映画ですが主人公と悪党ふたりを図式的に翻弄するふたりの女優ルチア・ボゼーとマリア・グラツィア・フランチャ。
どちらもその髪は一見では無造作に束ねられているだけなのに、これ以上にないくらい端的に内面を表しているかのようです。
ばさついて、恐らくは白いものが適当に交じって、お世辞にも手入れが行き届いているとはいえないのに、山間をうねる小川のようにしなやかに流れ、すっと気持ちよく伸びた華奢な首にも、逃げ水のように儚いうなじにも何故かよく似合ってます。
その上、ありあわせの生地で間に合わせたかのような継ぎ目だらけでざっくりとした衣服とも見事に調和しています。
同じジュゼッペ・デ・サンティス作品の『にがい米』の時にも触れましたがイタリア女優はとにかく演技の巧い下手だの誰にも言わせぬ堂々とした艶っぽさがたまらない。
意識的である、ないに関わらず自分が映っているだけで画面に艶が帯びてくるのは当然だと言わんばかりの堂々ぶりは、何十年のベテランだろうが、今日初めてキャメラの前に立った十代の少女だろうが全く同じなのですから。