しゅん

女体のしゅんのレビュー・感想・評価

女体(1964年製作の映画)
-
原作が同じ鈴木清順『肉体の門』と同じ年に公開。

現在パートも回想シーンも汗と暑さ。そして雨。牛の屠殺シーンは、引っ張る仕草がマヤの吊し上げ、首から垂れ流れる液体が終盤の白い嘔吐と赤い流血に繋がるような。

一時停止での回想へのつなぎが印象に残る性交シーン、二階から車を見下ろす構図、電車に乗り込む早歩きの人々の様子を映すショットと、上からの撮影が多い。その中で、戦後すぐの回想パートでは横移動で四人の女と一人の男を映す動きが印象強い。というかカッコいい。撮影者の運動が観る者の感覚にも響くかのよう。張りのある混乱期の生活に対して、平穏な現在が虚しくて仕方ないという心理的対比が、画面の上でも躍動していて良い。

最後の三方向からのアップの強さは一体なにからくるんだろう。再会する時に手から先に映るのが巧い気がする。武満徹の音楽は、前半の記録映像(原爆、玉音放送、東京裁判、マッカーサーなど)に乗るタンゴ風の曲が一番記憶に残ってる。
しゅん

しゅん