『友だちのうちはどこ?』(خانه دوست کجاست ؟、Where Is the Friend's Home?)1987
1987年はイラン・イラク戦争中。「お兄さんは軍隊に行ってる」という台詞もある。
主人公アハマッドは小学校低学年。隣に座ってるモハマッド・レダ・ネマツァデがノートを忘れて先生に厳しく叱られる。「明日ノートを忘れたら退学だ」帰宅したアハマッドは自分の通学カバンの中にモハマッドのノートが入っていることに気がつく。間違って持って帰ってしまったのだ。今日中にモハマッドに返さないと明日退学になってしまう。アハマッドはノートを返そうとするが母親は宿題やらないうちは出かけたらダメと外出を許してくれない。母の目を盗んでモハマッドが住む隣村に出かけるが、、、
1979年のイスラーム革命で成立したイラン・イスラーム共和国の児童青少年知育協会が製作した映画。映画会社が作った民間映画ではなく官製教育映画なのだがプロパガンダ色は全くない。
大人は子供の言うことを聞き入れず頭ごなしに怒ったり命令したり。主人公が何か尋ねても、まあ一回でまともな答えは返ってこない。
「ネマツァデの家は何処?」
「ここらはみんなネマツァデだ。その子の家はヤギを飼ってる?」
「ミルク持ってきたから飼ってると思う」
「じゃあ枯れ木のある家だ」
どの家にも枯れ木がある。
大人は同じことばかり繰り返す(小津安二郎の影響?)子供を厳しく叱る。映画には描かれないが体罰も認められている。
権威主義社会の田舎の村の沈滞した様子にだんだん腹が立ってくるほどだ。だがそれは観客が監督に操られている証拠。
ラストのワンカットで思わず「やられた!」と笑みがこぼれてしまう。
無理解な大人に翻弄されて悪戦苦闘する主人公のとった最後の手段にジーンとしてしまう。あーかわいい、かわいい。抱きしめたくなる。