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友だちのうちはどこ?のmidoredのレビュー・感想・評価

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)
5.0
8歳の男の子がともだちのために知らない村を走り回るお話です。

主人公アハマッドの心優しさに胸打たれました。先生に叱られて泣きべそかいているモハマッド・レダ・ネマツァデ君を心配して不安そうな顔をしたり、転んだら助けてあげたり、挙句の果てには、お母さんの言いつけに反してまで、ノートを届けに行ってあげる。本当に良い子です。

一方、大人たちは非常に厳しい。先生は怖くて命令は絶対だし、親も家事や仕事の手伝いをしっかりさせるし、とにかく目上の人間の言うことが聞けるようにならなくてはならないからと、お爺ちゃんまでもが孫にけっこう理不尽なことを命令します。

現代の日本でこれをやったら虐待とかなんとか言われそうだけど、そうではなくて、礼儀正しく、役に立つ人間になってほしくてやってるのですね。

だからちゃんと宿題をノートにやってくれば先生は丸をくれるし、お父さんからゲンコツをもらった後にはお母さんが優しくご飯を用意してくれる。日本も昔はこんなものだったのだろうと思います。

元ドア職人のお爺さんの優しさと遅さ、現代のドア職人の不遜さと早さが対になっていました。宿題をしてる時にドアが風でバタンと開き、洗濯物を取り込むお母さんの姿が目に入ります。鉄のドアなら風で開いたりしないけれど、古い木のドアだからこそ気付ける世界があるのです。

とんでもなくもどかしいアハマッドの彷徨に付き合うことで、観客も古い木のドアの向こうを見たのかもしれません。

ラストは心底ホッとしました。何もかもが報われたような心地です。ドア職人のお爺さんからもらった花がネマツァデ君のノートから出てきた時の気持ちは天国のようでした。

人を思いやる心の温かさや、色んな人たちとの繋がりを感じられる作品です。
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