アハマッド君が素朴で可愛い。ネマツァデ君はもう少ししっかりね。シンプル過ぎな物語で俳優は素人だけど、こころが深く揺さぶられたので最高スコア。たったこれだけの素材で表現豊かな作品に仕上げることできる監督キアロスタミは、やはり類い稀な才能の持ち主なんだろうなー。
3部作の1つですが、本作はあとの2作品の根幹になっています。
間違えて持ち帰ってしまった友だちのノート。「はやく返してあげないと友だちが厳しい先生にこっぴどく怒られる!」この使命を抱えて遠く離れた友だちの家へと向かう様子を描いた作品です。場所もわからないので子供にとっては大冒険。
出かける必要性を説明しても取り合ってくれない母親。場所を聞いても要領を得ないおじさんたち。理不尽に感じる大人たちの言い分が障害となり、物事は思うように進まない。不安でこころ揺さぶられるー。無断で家を出てしまい、日も暮れて時間だけが無情にも過ぎ、不安がどんどん増す一方。あー帰ったら親に怒られる…友だちも退学になってしまう…
イライラとはらはらどきどきの両方を味わいながらアハマッド君に深く共感し、ちゃんとほっこりもさせてくれる一品です。
ノートに挟まれた一輪の花。物語のたたみかたもさらりとして素敵。