アッバス・キアロスタミ3部作の1作目。
間違えて友達のノートを持って帰ってきてしまった少年が、そのノートを返すため、隣町にある友だちの家を探し回る冒険物語。
良かった！
キアロスタミは子どもの目線を繊細に表現するのが非常に上手いと感じた。
大人からすれば、ノートごときで…と思ってしまうが、同監督の『ホームワーク』から窺えるように、宿題に厳しいイランの子どもたちにとっては死活問題である。
「ノートに宿題をしないと、友だちが先生からひどく怒られて退学になってしまう！ヤバい！」という少年の焦りがひしひしと伝わってくる。
『ホームワーク』と同様に、子どもたちが学校と家庭との間で板挟みになる様子が描かれている。
教師や親は子どもたちを頭ごなしに抑えつけ、宿題と家の手伝いの両立を厳しく求める。
いくら理不尽でも、目上の人の言うことは絶対！という空気感に翻弄される子どもたち。
そのような背景もあるので、余計に主人公の少年の焦りへ感情移入してしまう。
馴染みのないイランの生活風景を窺うことができ、異文化への理解が感覚的に深まったのも良かった。
