セツナヤスハラ

友だちのうちはどこ?のセツナヤスハラのレビュー・感想・評価

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)
4.2
芥川龍之介の『トロッコ』のような子供時代の灰汁みたいなのが染み出て
綺麗なノスタルジアとは違って真に子供時代の感情を甦させられるそんな映画。



"事情"を主人公と同級生だけに切り取ることによってよりその演出が生えて映る。
先生は言うことを聞かない子供を叱るだけ
母は宿題をやらせようとするだけ
祖父は古いしつけを孫にするだけ
街を案内してくれる歩くの遅いおじさんは
親切に案内しようとしてくれているだけ
彼らにも事情があるはずだけれどもそれはあっさりで深く語られることは無い

大人たちを良い人間とも悪い人間とも劇中のセリフで断定してないのも良い
というかこの主人公はそれを持ち合わせてない。
つまり主人公は幼いことから
考えはあるのだけれども、言語がそれに追いついてないで悶々としている
それらの言語的な空白は誰しも経験があるだろう。
今ではそんなことを忘れてしまっていたが
この映画を見ることによって幼少期の胸のざわめきを思い出し
子供たちは日頃別に何も考えていないわけではないことを理解する手助けにもなるだろう。
大人も子供も物事を知覚する人間でその違いは社会的な境界線でしか区切られてないということも大袈裟かもしれないが読み取れる。