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踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!のHicKのレビュー・感想・評価

3.2
《醍醐味を失った暴走劇》

【リスタート】
シリーズ刷新へと踏み込んだ第三弾。キャスト、音楽、舞台、その他"お決まり"の削除など、変更された要素がかなり多い。とりわけ、地に足のついた物語で魅了してきた訳ではないこのシリーズにおいて、『コレコレ!「踊る」ってコレっしょ!』が少ないのは致命的。

【良かった点】
・小栗旬演じた鳥飼は、高圧的キャラ一辺倒だった本庁側として新鮮だった。
・「俺に部下はいない。いるのは仲間だけだ」のクサイ決めゼリフは、一周回ってどストレートさが好きかも。
・青島や犯人の命の価値観に纏わる物語なので、従来の"捜査上の悲劇"を扱うクライマックスとはことなり、道徳感がある作風。これが好きって訳じゃないけど、「踊る」としては新鮮。

【脚本】
今まで以上の悪ノリ。ドタバタ劇の中、意味の薄いシークエンスの連続。過去最長の尺に。特にスカンクの長尺コントいらないよなぁ。黒澤明の「生きる」を元ネタに、葛藤・笑い・感動の間を行き来する展開は、とても危ない綱渡り。漂う不謹慎さと滑稽さ。

中国人描写(言語の壁より頭がおかしい)は若手芸人的安易さ。署長たちの謝罪会見はドリフのコント。笑った事に罪悪感を覚えたほどのタブーな誇張。

過去の犯人たちの登場は今作の売り。でも、リアリティを犠牲にした割には面白さに繋がってない。その他、メインキャラですら上手く機能せず。

【演出】
いつも以上にガヤガヤの長回し。

【音楽】
音楽担当が変わり従来の楽曲の使用に制限がかかった事が意外とデカかった。別作品のよう。今までも音楽の主張は強かったけど、今回はかなり場面を誇張する音楽で、独り歩き。結構「音楽、邪魔だなぁ」と思ってしまうシーンが多い。

【その他】
・大人の圧力で雪乃さん(水野美紀)が抹消された。悲しい。今だったら問題。

【総括】
方向性をリセットしようとした野心は感じるものの、今までの魅力がないうえに、今まで以上の悪ノリを見せる脚本と演出。詰め込み放題の暴走。強いて言えば、脚本の粗さとオタク演出のみが『「踊る」ってコレだよな!』と感じさせる。
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