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TOMORROW 明日のtakのレビュー・感想・評価

TOMORROW 明日(1988年製作の映画)
4.0
8月9日に寄せて。

反戦映画も数あれど、戦場で命を散らす人々が出てこない異色の作品。アニメ「この世界の片隅に」で、戦時中の日常が描かれたことが大きな共感と感動を呼んだが、80年代に製作された「TOMMRRO 明日」で描かれるのは、長崎の日常風景だ。

空襲警報が鳴らない間の結婚式、流産を乗り越えてやっと授かった子供、お手玉の中に入れていた小豆、通り雨、その後で見上げる虹。戦時中ではあるが、そこには確かな日常があった。 

それが映画の最後包まれた閃光で全てが失われてしまうのだ。1945年8月9日、午前11時02分。

映画は長崎に原爆が投下されるまでの一日を淡々と綴っていく。ストーリーめいたストーリーがあるでもない。描かれた日常の中にいる人々は平穏に、また懸命に暮らしていた。明日は当然に来るはずのものだった。それが奪い去られた。一瞬のうちに。

結末ありきの映画である。結末を知らないで観てはいけない、そんな珍しい映画だ。その悲劇の結末を知るからこそ、描かれた日常が愛おしい。それを消し去った原爆の怖さ、戦争がたらすものが、強烈なメッセージとして心に焼きつく。
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