猫脳髄

マニアックの猫脳髄のレビュー・感想・評価

マニアック(1980年製作の映画)
3.4
俳優ジョー・スピネルが自らの企画・製作、脚本、主演で撮ったというスラッシャー映画。低予算ながらなかなかの興行成績を記録した。イライジャ・ウッド主演で2012年にリメイクされている。

ニューヨークで孤独に暮らすスピネルは、亡き母親による虐待のトラウマで生身の女性と正常な関係が持てず、マネキンに囲まれて暮らしている。歪んだ憎しみから、娼婦を手始めに女性たちを次つぎに手にかけ、その頭髪を奪ってマネキンを飾り立てていた。たまたま出会った写真家のキャロライン・マンローに強く惹かれたスピネルは、彼女に近づこうとするが…という筋書き。

70年代にニューヨークを震撼させた射殺魔「サムの息子」事件をモデルにした実録調で、巨漢スピネルが不気味に飾り立てた自宅でマネキンと戯れる姿はなかなかのもの。昨今、わが国でも凶悪事件で俎上に載せられる「無敵の人」の姿を思わせる。特殊効果にトム・サヴィーニが参加しており、ゴア表現も凝っている。スカルプハントの皮剥ぎシーンやショットガンで頭を吹き飛ばすシーン(ハンバーガーをダミーに詰め込んだとのこと)のケレン味たるや、である。

筋はリニアなので、スピネルの怪演やゴア表現に注目させる趣向だが、虐殺ハイライトでのスローモーションは今となっては凝りすぎでややダサく、墓地での幻覚シーンも蛇足に感じる。しかも、まさか夢オチかと思わせる描写もあり(自身も出演したマーティン・スコセッシ「タクシードライバー」(1976)の影響か)、フィクションの強度を落としてしまうような禁じ手はいただけない。見るべきショット、演出はあるが、総体的には評価が落ちる。
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