シリアルキラー、マニアックの哀しき生き様。
被害者側に視点を置き、殺されると次の被害者視点へと移っていく1話完結ドラマみたいな構成が独特。
ヒッチコックの「テーブルの下の爆弾」の話で言うと、「爆弾魔に当たる人物」が見えていることで、サプライズの連続であると同時にサスペンスの連続になっている。車でイチャつく2人を急襲したり、駅のトイレでかくれんぼしたりと「爆発」のバリエーションも豊か。
ブツ切りに見えがちな構成ながら、徐々に浮かび上がるマニアックへの興味でスムーズにギアチェンジ&加速していくのも巧い。
これだけ犯罪心理を分析できそうな犯人だと、もっと事件を捜査するなり彼に抵抗する存在を置きたくなりそうなところを、マニアックという素材の味一筋で勝負する潔さ。
“人の姿を留める”写真家と出会ったことで、”人の在りようを保存”しようとしてきた自身はいっそう揺らぎ…
変わることを裏切りだと信じ込んできた己に囚われ、倒錯と偏愛に満ちた自らに殺される。