谷崎潤一郎原作。
中年男が若い娘の虜になって身を滅ぼしていくというお話は、スタンリー・キューブリック監督の『ロリータ』(1962)をはじめたくさんあるが、本作はその中年男を小沢昭一が怪演しているところが見どころ。
機械工場に勤め、酒もギャンブルも女もやらない堅物だと周りから思われている譲治(小沢昭一)。
しかし実は、自宅として使用している別荘にナオミ(安田道代)という18歳の少女を住まわせて、身だしなみも立派で教養も品もあるレディに育てようと『飼育』していた。
ナオミの両親は彼女に無関心で、
譲治に対して、
どうぞ差し上げます、という態度。
二人は結婚するが、譲治の思いとは裏腹に、ナオミは次第に派手な女性になっていき、異性関係も乱れていく。
それを知った譲治は、ナオミを家から追い出すが、ナオミは合鍵を使って、数日ごとに家に戻ってくる。
ゆがんだ愛情と嫉妬に狂った譲治は、
段々と正気を失っていき・・・
冒頭にも書きましたが、
小沢昭一の怪演が凄い。
少女を自分の理想の女に『飼育』しようという思いが、実は強烈なマザーコンプレックスの影響だとわかるシーンも、気持ち悪いが見入ってしまう。
『飼育』しているつもりの譲治が、実はナオミに『調教』されていく様子。そのプロセスが増村監督らしいじっとりとした描写で描かれていく。
完全に壊れてしまった譲治。
それでも最後は究極の愛情によってナオミと結ばれる。
僕だったら、絶対無理だけどね。
小悪魔的な安田道代も魅力だが、
やわな大学生役で出演している田村正和が若々しい。
自宅に残したナオミの衣服を背中に背負いながら、
四つん這いになり馬の真似をする小沢昭一が忘れられない。