アキヒロ

老人Zのアキヒロのレビュー・感想・評価

老人Z(1991年製作の映画)
3.4
「高齢化社会」という問題が噴出した時代に作られた作品。
寝たきり老人でも全自動介護ロボットで安心介護、という厚生労働省の新発明品がのっけからプレゼンされるというキレキレっぷり。
このときの老人が死んだ魚のような表情ですごくシュール。

脚本が大友克洋、キャラデザが江口寿史という、当時油ののったクリエイターたちが起用されていて豪華。
それに社会問題を絡ませており、ひょっとしたら自然保護を謳う宮崎駿映画のような立ち位置を想定していたのかもしれない。
老人が主人公というのが、なんとも大友らしい脚本。
それにオーバーテクノロジーコンピュータが人間と混淆するというストーリーラインは80~90年代によく見られる『攻殻機動隊』型のストーリーになっている。
ただ全体的に印象が地味で、話に爆発力が足りないような気がしてしまう。
最後まで見ると、老人=鉄雄なのは明白なんだけど、鉄雄のような絶望感を老人が背負っているわけではない。
大友も『AKIRA』『スチームボーイ』を映画化しているが、漫画家でデビューしたての頃は『さよなら日本』や『童夢』などはストーリーだけで言うと素朴で華がなく、「脚本というより表現の大友」というイメージである。

同じ漫画家である大友がキャラデザをすることもできたはずだが、大友が描く絵は「女の子が可愛くない」と有名なので、今回は江口に白羽の矢が立ったんだと思われる。
最初の美女の太腿ショットからの顔へのパンはいじらしく、大友が監督していたならありえないカットだろう。

この作品はセル画でアニメーターがポスターカラーで専用樹脂で色を塗って絵を動かしているタイプのアニメなんですが、絵が動く動く。
現在は100%コンピュータ着色になっていますが、これはまだ塗りの素朴さが出ていて懐かしい気持ちになりますね。
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