近本光司

アンドロメダ…の近本光司のレビュー・感想・評価

アンドロメダ…(1971年製作の映画)
3.5
相当にヘンテコな SF 大作。ネバダ州の砂漠に位置する小さな町の住人たちの不審な集団死。彼らは宇宙からの未知なる病原体――つまりは生命――に感染し、瞬く間に血液が粉状化して死んでいたのだった(ナイフで手首の動脈を切ると零れ落ちる真っ赤な塩のような血液)。この病原体の解明のため、米国政府が秘密裡につくった地下深くのラボに米国中から気鋭の科学者たちが集められる。体感ではここまでがおよそ 30 分ほどだろうか。残りの尺はほとんどがラボでの研究に充てられる。科学者たちのあいだでは専門用語が飛び交い、コンピュータは暗号のような文字列を表示し続けている。この映画のヘンテコさは、その一連の下りが緩慢として退屈だとも、緊張感が張り詰めているとも言えてしまうことだ。本当に宇宙からこのような病原体が飛来したとしたら、じっさい物事はこのように進むのではないかという説得力。公開は1971年。月面着陸で米国に先を越されたソ連の科学者たちは、このロバート・ワイズの作品を観てさらなる焦りを憶えたかもしれない。この映画は、主任科学者が次なる病原体がいつ現れるかわかりませんという警句をカメラに向かって発して幕を閉じる。ニクソン大統領が取りやめたはずの生物兵器の開発を米国は密かに進めているのではないかと勘繰った者もいるのではないか。事実バイオテロの可能性にも言及される。高度に政治的な映画。