イチロヲ

歌麿をめぐる五人の女のイチロヲのレビュー・感想・評価

歌麿をめぐる五人の女(1946年製作の映画)
4.0
時代の寵児となった歌麿(坂東簑助)が、自らの創作活動のために多くの女性を翻弄していく。絵師の職人脳に振り回される女性たちの悲哀を綴っている、ヒューマン・ドラマ。邦枝完二の同名小説を原作に取っている。

美人画の素材探しに腐心する歌麿と素材扱いを受けることになる女性。その両視点から、人間の悲喜を説いていくスタイル。江戸時代の女性の身なりや嗜好を、つぶさに考証しているところが醍醐味。

ドラマ開始時点で、すでに歌麿が所在不明の「時の人」となっており、庶民の人間模様から歌麿の影響力を開示していく手法がとても面白い。それだけに、歌麿本人が映像内に出てくると、逆にテンションが落ち込んでしまうという側面あり。

また本作では、後のお色気映画で多用されることになる、殿様のエロ享楽が登場(戦後作品としてはグレーゾーン)。歌麿と女たちの関係は、サドマゾの概念と重ね合わせることが可能であり、溝口健二のサディスト気質を推量すると、さらに面白味が増す。
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