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影なき男の一人旅のレビュー・感想・評価

影なき男(1934年製作の映画)
5.0
W・S・ヴァン・ダイク監督作。

アメリカのミステリー作家ダシール・ハメットによる1934年発表の推理小説「影なき男」をW・S・ヴァン・ダイクが映画化したMGM作品で、本作の好評を受けてシリーズ化され全6作制作されました。

元探偵の主人公ニックは、探偵好きな勝気な妻と平穏に暮らしているが、ある日旧知の発明家の失踪事件の解決を彼の家族から依頼されたニックは、消えた発明家のゆくえを追ううちに彼の周辺人物を巻き込んだ連続殺人事件の謎に直面してゆく…という王道の“殺人ミステリー”で、飄々としつつも頭脳明晰な主人公が明朗な妻&愛犬をお供に謎めく事件に挑みます。

失踪した発明家の家族や弁護士、愛人、知人ら多くの登場人物の相関関係を手際よく提示した上で、連続殺人事件の真犯人を絞り込んでいくオーソドックスな推理サスペンスで、容疑者と思しき人物全員を一か所に集めた上での謎解きクライマックスは群像ミステリーの醍醐味を味わせてくれますし、主人公と妻の夫婦漫才のようなコミカルな掛け合いも愉しさ満点となっています。

凸凹探偵夫婦&ワンちゃんが織りなすファミリー喜劇と本格派の殺人推理ミステリーが融合した肩の凝らない知的エンタテイメントで、主演のウィリアム・パウエル&マーナ・ロイの屈託のない夫婦芝居に加えて、臆病過ぎる愛犬アスターの愛くるしい仕草がほのぼの可愛い作品です。
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