ハマジン

ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦のハマジンのレビュー・感想・評価

-
ロデオで自分を負かした猛牛・サンシャインにリベンジするために、故郷のロデオ大会に出場するジュニア・ボナー(スティーヴ・マックィーン)の数日間を描いた映画。作品全体ののどかな印象とは裏腹に、売りに出されて今は採掘現場となっているジュニアのかつての生家が重機によって壊されていくカットと、ブルドーザーに阻まれて立ち往生するジュニアの車のカットをクロスさせる鋭利な編集や、入院中の父親エース(ロバート・プレストン)を見舞いに行くシーンで家と病院との間の道のりをばっさり省略する(ジュニアが家を出た直後、すぐ父親のいる病室のカットに切り替わる)くだりなどに見られる威勢のいい演出は、さすがペキンパー。

ロデオ大会のパレードのシーンをはじめ、ジュニア・ボナーとその家族だけでなくパレードの楽隊たちや見物人などを含め、画面に映る誰一人として特権的に扱わず、すべての存在に等距離にカメラを向ける清潔な視線に感動する。特に酒場での喧嘩のシーンは白眉で、大乱闘のさなか平然とトランプに興じる一団も、どさくさにまぎれて女を連れてトイレにしけ込む小男も、ステージの楽団も、いつの間にか酒場に入り込んで誰彼かまわず威嚇するバカ犬も、同じ空間にいる等価の存在として同時並列的に描かれていく。

そして何よりアイダ・ルピノ!アイダ・ルピノがすばらひー。
ロバート・プレストンとアイダ・ルピノのボナー夫妻が酒場の裏口の狭い階段(2人の後ろを酒場の客が邪魔そうに次々と通り抜けていく)で交わすやりとりで、夢ばかり追いかけて「(一攫千金のために)俺と一緒にオーストラリアへ来てくれないか」という夫にビンタをくらわせた後、そっと彼の頬をなでるしぐさに泣いた。とてもいいシーン。
ハマジン

ハマジン