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君と行くアメリカ航路の一のレビュー・感想・評価

君と行くアメリカ航路(1950年製作の映画)
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絶妙にアメリカナイズされた斎藤達雄がバナナの皮ですべったり、終盤の水着コンクールにおける素晴らしい(馬鹿馬鹿しい)ブラスバンド使いであったり、島耕二監督の流石の脱力演出が珍しく不思議な多幸感を生み出す。東京キューバンボーイズなどが登場する多国籍的音楽演出のファッションショーとか普通に楽しいし。こうなると斎藤の役名が芝小路(しばこうじ)←→島耕二(しまこうじ)と心底どうでもいい楽屋落ちの洒落になってるのも嬉しい。楽屋落ちで言えば想像以上に腕っぷし喧嘩アクションをこなすバーテン灰田勝彦の「あなた灰田勝彦そっくりね」の件なのだが、斎藤と共にアメリカへ旅立つ香川京子を遠目に眺めながら灰田が「灰田勝彦になりたいなあ」みたいなことを切ない顔で呟くラストはほとんど灰田勝彦の実存に迫っている。前田陽一『喜劇 日本列島震度0』を観て以来、僕は歌手・灰田勝彦が好きなんである。欠落しているというパートカラー部分はおそらく香川が見る夢のシーンなのだろうが、なんかむしろその後のすべてが香川の夢?って気がしてくる。
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