オーウェン

ハンガリアンのオーウェンのレビュー・感想・評価

ハンガリアン(1977年製作の映画)
4.0
このハンガリー映画「ハンガリアン」は、大国の動向に翻弄されてきたハンガリーの姿を純情な農民の姿に重ねながら、その運命をリアリスティックに描いたファーブリ・ゾルタン監督の力作だ。

第二次世界大戦中の1942年冬、雪に閉ざされたハンガリーの小さな寒村から、4組の夫婦と二人の独身男がドイツへと旅立つ。
1年間の契約で同盟国ドイツの農場に出稼ぎに行くのだ。

彼らはそれまで一度もハンガリーの村から出たことはなく、今度のドイツ行きで初めて外の世界に触れたのだ。
だが、時は第二次世界大戦のさなか、しかもドイツが敗戦への坂を転がり始めた頃だった。

彼らが初めて目にする悲惨で過酷な戦争の現実は、やがて彼らの運命を否応なく巻き込んでいく。

農場のドイツ人は、型通りの仇役ではなく、条理をわきまえ、温情の持ち主でもある。
支配人は、農民たちと同じマジャール人だが、これも虎の威を借りた狐みたいな仇役ではなく、厳しくはあるが、農民たちの立場もよく考えてやり、海を見たことがないという彼らを海岸に連れていってやったりする。

そして、近くにある捕虜収容所の連中と接触したり、収容所へ送られるユダヤ人たちを目撃したり、全体が暗いムードに包まれてはいるが、その中で人間的な優しさや温かさが、静かな調子で醸し出されていくのがとてもいい。

帰村してホッとする間もなく、召集されて死地へと赴かなければならなくなるラストも余韻があり、ナチスに押しつけられた戦争の悲劇が、強く印象づけられる。

出演者はなじみのない人たちばかりだが、一人一人が深く心に残る。
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