Omizu

東京公園のOmizuのレビュー・感想・評価

東京公園(2011年製作の映画)
4.5
【2011年キネマ旬報日本映画ベストテン 第7位】
小路幸也の同名小説を原作とする。第64回ロカルノ映画祭で審査員特別賞を受賞した。

青山真治らしい、としか言いようがない。非常に奇妙な話で、傑作と言うよりはどちらかというと珍品になるのかな。リアリティははっきり言ってないが、一種の寓話のような作品だと思う。青山真治作品はみんなそうか。

なんと言っても主演の三浦春馬だよね。演技は別に上手くないんだけど、三浦春馬にしかできない役ってあると思う。これと今泉力哉『アイネクライネナハトムジーク』はそこを上手くあてがった。愛さずにはいられない魅力がある人だ。演技の上手い人はこれからもどんどん出てくるけど、三浦春馬の代わりをできる人はいない。本当に惜しい人を亡くした。

青山真治って物事をはっきりさせることを嫌う人なんだな。生と死、記憶と現実、自分と他人、善と悪。そういうものに境界線を引かない。それが青山真治の美学であり優しさなんだと思うな。

三浦春馬と染谷将太は生と死、榮倉奈々と三浦春馬は愛情と友情、三浦春馬と小西真奈美は姉弟と恋人の間で揺れ動く。

最初はそれぞれがどんな関係なのか全く分からない。それが会話や言動によって明かされていく。その手腕が実に鮮やか。全ては説明せずに想像の余地を与える見事な演出だ。

観た直後は「なんだったんだろう」と困惑するが、考え出すと止まらなくなる。未だに考えがまとまらない。小西真奈美はどうして筆島を見て泣いたんだろう。ゲイでもふとこの人しかあり得ないと女性にプロポーズしてしまうことってあるのだろうか。そんなことが頭から離れない。

すごく歪で変な映画だとは思う。誰もがいいと言うわけではない。はっきりとした物語を語る映画ではなく寓話として捉えると色々と考えざるを得ない。不思議な作品だった。
Omizu

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