ベビーパウダー山崎

わが心の炎のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

わが心の炎(1987年製作の映画)
4.0
異常な嫉妬心で束縛するキチガイのDV男に熱烈に愛された女性が逃げた先で出会ったインテリ男性と愛を重ねる度に離れられなくなり、のめり込みすぎた果てに心が潰れ頭がおかしくなる。端から精神が不安定だったのか、イカレタ男と共に過ごした挙げ句、伝播した狂気に憑かれていたのか。
女性が壊れていく過程が痛々しくて見入ってしまう。女優として舞台に上がっていた彼女が突然、ストリップ小屋でゴリラのぬいぐるみとファックしだしたら何を思う。しかも彼女は「演劇もストリップも客に喜びを与える同じ仕事だ」と真剣な表情で訴えてくる(すでに狂ってる)。ものごとを客観的かつ理論的に捉えていたリベラルなインテリが彼女の自由な振る舞いを受け入れられるかどうか。他人ならストリップもきちんとした職業だと綺麗事で終わらすこともできるが、いざ自分の彼女ならどうする。
玉ねぎを切っていた彼女がおもむろにその包丁で肩を刺してくるショック、ブラウン管テレビのノイズと全裸で自慰行為をする女性、異国の地で一人彷徨うラストもいい。カフェで友達と話している最中、タバコに火を付けるといきなり引火してマジックのフラッシュペーパーのように一瞬で炎が燃えて消えるくだりなんだったんだろう。普通にびっくりした。
放浪と(誰にも理解されない)孤独というのは確かにどの作品にも通じている気がするが、アラン・タネールがどのような作家なのかますます分からなくなる、その表現者から投げ出された簡単には消化できない困惑を俺は求めている。