森村バイヲ

エレファントの森村バイヲのレビュー・感想・評価

エレファント(2003年製作の映画)
5.0
断片として存在する生活たちの群れ──「日常」を、群像を通して提示される。
様々な日常は時間の流れを無視し、時空間をポイントトゥポイントに配列されリゾーム的な時間を作り出す。直線的な時間軸では見えてこないであろう文脈を産み出している。時にポイント同士は重なり、風景は反復され、印象は増殖する。
ヴァンサントの鋭く鮮やかな映像と生々しい音は痛いくらいに肉感的で、かつ断片的で一人一人を追尾するような長回しは、それらの儚い、白昼夢のような一瞬を表現し、無限の日常と一瞬の日常を同時に作り出している。素人たちを起用し、ほぼアドリブで台詞と演技が作られたのは、それが大きな理由なのだろう。
日常こそが日常を破壊する、それすらも日常であることを、映画という非日常の中に託しているのだ。
森村バイヲ

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