Koshii

エレファントのKoshiiのレビュー・感想・評価

エレファント(2003年製作の映画)
3.7
ガス・ヴァン・サント監督の映画を観たくて。

年末に実家に帰省した際に、母親は教えてくれた。「近所のTSUTAYAが無くなるって。」
全てのレンタルDVDが中古販売になり、トールケース毎、レジに持って行く人達。
ご多分に漏れずに私も、弔いの意を込めて、両手に抱えて購入させて頂いた。

思い出の場所、大好きな場所がまた一つ無くなってしまうのね。

本作は、そんな中で抱えた一本。

ずっと観ようと思っていた作品。
ジャケットに写る女優さんが、アニャだと思ってた。

内容も知らないまま、再生した。

とある高校の日常。その日を、その瞬間の連続をあくまでも客観的に切り取るための枠取り。登場人物それぞれの視点からの風景、感情。ゆっくりと内側へ絞られていく感覚。今日であり、その日であった。それだけ。何かに向かっていく、写真の連続のような映画でした。


以下、ネタバレを含みます。












これで、一つのストーリーを持った映画になるんだという感想。展開の数もスピードも、日常そのもの。実際に起きたコロンバイン高校銃乱射事件を基に作られた本作には、監督のインタビューでもあったように、明確に善も悪も描かれなかった。全ては、我々鑑賞者に委ねられた。

どう感じたか。どういう問題提起と捉えたか。
私は今作を鑑賞している間、ずっとある映画を思い浮かべていた(舞台と展開、構成が極めて似ていた)。その映画には、終わりと強いメッセージ性があった。
そして、その事をふと思い出し、思考を巡らすことが今でもある。

一方で、本作は、明確な終わりがなく、動機もわからず、背景もほとんど無い中で、淡々と切り取られる事件の一部始終であった。そう、一部始終でしかない。メッセージや意図も私の主観でしかなく、それでも、考えさせられる。なおさら、1から考え直したくなる。そんな作品だった。

こんなにも俯瞰して、悲惨な事件を伝えることができるということ。映画の持つ役割について、改めて考える機会にもなった。
Koshii

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