このレビューはネタバレを含みます
1999年にアメリカで実際に起きた“コロンバイン高校銃乱射事件”がモチーフとして描かれた作品。
淡々と描かれる学生たちの何気ない日常。
バックに流れる“ピアノソナタ第14番”や“エリーゼのために”。
まるでドキュメンタリー映画を観ているようだ。
淡々と
ただただ淡々と
どこか他人事のような描写に終始する。
切り変わる視点
色んな角度から見たあの日
学生たちの平凡な時間が流れ、
惨劇を予感させる欠片もない…
一切の説明のない描き方
あえて私情をはさまない事でリアリティーを創り出す。
まるでシューティングゲームの世界を実践するかのような、あまりにも命に対する感情が希薄な襲撃の場面。
少年二人は何処か殺戮を愉しんでいるかのような表情だ。
まだキスもしたことのない年頃で、この世を見限った少年二人
どうしてそこまで追い込まれたのだろう…
多感で理屈じゃない少年時代の心の叫びを、当事者でもない他人が理解しようとすること自体がナンセンスなのかもしれない。
この映画のストーリーに良いも悪いもないが、視点を変えながら淡々と描くことで誰かの主観とならず、それぞれの普通の1日に起きた予想もしない惨劇をよりリアルに感じさせていた。
少年時代のやんちゃでいわれのない残酷なイジメ
イジメを見てみぬふりするクラスメート
頼りにならない大人達
“エレファント”
「elephant」は、皆が重要・重大な問題であることを認識しながらも、触れずに避けることの比喩、所謂“タブー”の意味での使われ方があると知った。
未成年の凄惨な犯罪は、珍しい話ではない。
何処か様子がおかしいな、大丈夫かなって、他人事では済まさない周りの“気付き”や“お節介”がもっとあったなら、防げた犯罪もあったのかもしれない。
本作を観て、それぞれが何を感じるか。
ラストに流れる“エリーゼのために”
突然人生の幕を降ろされた者達への鎮魂歌のよう。
ピアノの音色が物悲しく、余韻を残す。