初期の今村昌平作品では『豚と軍艦』と並ぶ荒唐無稽なドタバタ・スプラスティック喜劇。謎のファム・ファタールを演じた渡辺美佐子のキャラ造形がのちの『にっぽん昆虫記』にも通じる「がめつさ」がある。
童顔で童貞の長門裕之がカワユイ。サザンの桑田に似てる。純真無垢な彼とモルヒネ強奪を企てる悪党一味の対比がお見事。その映画的仕掛けの数々には目を見張るものがある。やはり師である川島雄三作品に近い「群集劇」スタイルで誰が主役なのか判別不可能な辺りも川島の作劇法と似ている。
前作『盗まれた欲情』と『西銀座駅前』が些か未完成だったのに対し、脚本の完成度がグン!と上がった娯楽映画の見本みたいな出来。最終的に「したい」「やりたい」といった欲望の肯定こそが今村昌平の終生のテーマだった気がする。開き直ったラストも爽快そのもの。