Omizu

ミラノ、愛に生きるのOmizuのレビュー・感想・評価

ミラノ、愛に生きる(2009年製作の映画)
3.8
【第83回アカデミー賞 衣装デザイン賞ノミネート】
『君の名前で僕を呼んで』ルカ・グァダニーノ監督作品。ヴェネツィア映画祭オリゾンテ部門に出品され話題を呼んだ作品。英国アカデミー賞やゴールデングローブ賞では外国語映画賞にノミネート、アカデミー賞では衣装デザイン賞にノミネートされた。

ティルダ様、一体何カ国語出来るの…無敵すぎる。全体のクラシカルな雰囲気と情感たっぷりなグァダニーノの演出、そして圧倒的すぎるティルダ様に酔いしれる。

ミラノの富豪一族でロシアから嫁いできた奥様、エンマを描いた一種の官能ドラマかな。その設定ゆえにティルダ様はイタリア語とロシア語を喋る。ネイティブではないからどう聞こえるかは分からないのだが、一体この人何カ国語できるの…と。

虚実ない交ぜにした不思議な演出が特徴的。あり得ないような映像がときたま挟み込まれたりする。「主人公にはこう見えている」という内面の描写が面白い。グァダニーノの他作品よりそこは顕著に感じた。印象に残ったのは娘のある事実を知ってしまうシーンとアントニオと目線が合うシーン。第三の壁を超えて語りかけてくるような驚きがあった。

あと思ったのは名前。グァダニーノは名前というものにすごく思いを込める人なのではないだろうか。『君の名前で僕を呼んで』はまさにそうだし、『ボーンズ アンド オール』もそうだった気がする。「相手から名前を呼ばれる」ということでドキッとするようなスリリングさを感じる。

エンマは自分の内面にある欲望、それを抑圧しようとする理性の間で思い悩む。それが終盤思わぬ悲劇に繋がってしまうのだが。いわゆる「奥様」という存在から抜け出す瞬間のスリリングさというものにドラマ性を見出す。それ自体はよくある話ではあるが、そこを先述した不思議な演出や情感たっぷりの画面で構成した上手い作品。

非常にグァダニーノの作家性が出た作品で好きだった。ティルダ様の演技も最高。というか演者がめちゃくちゃいい。アルバ・ロルヴァケルもよかった。グァダニーノとティルダ様にハズレなし。
Omizu

Omizu