なっすん

ドラえもん のび太と夢幻三剣士のなっすんのレビュー・感想・評価

4.3
―彼は強い剣士にはなれても
       不死身にはなれません―

【あらすじ】

赤い月が昇った夜、妖霊軍に捕まったしずかを助けにきたのび太・ドラえもん・スネ夫・ジャイアン。
しかし、スネ夫とジャイアンは敵の大軍にひるむばかり。
そこへ現れたのは黄金ハットと相棒ドラいおん。
二人は大軍にも物怖じせずにしずかを助け出すが、
正体を明かす瞬間に夢からさめるのび太だった―――


大長編史上最もかっこいいのび太!
なにをやってもダメなのび太が、白銀の剣士へ成長(?)するサクセスストーリー。夢の力で強くはなれても、傲慢にはならず心優しいままののび太だからこその格好良さ。

しかし他の大長編と比べてもダークな要素が多く、よくよく見てみると新しい発見のある作品。
大人目線でしっかり見返すと、別作品と比べて今作品のみにあらわれる描写が多く、不気味な作品であること気づける。



◆◆ネタバレ◆◆



【違和感① 敵】
普段はドラえもん達のほうから非日常に首をつっこんだ結果、その場で出くわす悪役と対立する話が多い。しかし今回は、最初から妖霊軍団が「のび太」という心優しい少年に狙いを定め、彼を弱い勇者に仕立て利用することで、夢宇宙の支配を企む悪役っぷり。
特にトリホーは夢宇宙と現実世界を行き来し、未来デパートとのやり取りも可能にしている周到ぶり。
漫画ではなく映画版では“気ままに夢見る機”の回収もトリホーのようなキャラへ変更となっているあたり、不気味さが際立ってくる。


【違和感② キャラクター死亡】
竜の汗を浴びることで「死んでも一度は生き返れる体」になったドラ達。“死んでも”とはいえ、あくまでも夢の中の話だ。
しかし、夢の中でも緊迫した冒険をしたいという希望で、夢と現実を逆転させるスイッチを押してしまう。
その結果、現実の世界でのび太と静香は一度「死亡」してしまっていることになる。
それを子供向け漫画にしれっと入れてくるところが凄い。
そして、本当の現実世界でボタンを押されなければ、ドラ達は全滅し死んでいた結果になりかねなかった。

【違和感③ スネ夫とジャイアンの離脱】
大長編のなかで、ラストシーンでスネ夫とジャイアンが闘いから離脱するという展開は極めて異例。

【違和感④ ゲストキャラのいない世界】
大長編では必ず仲間サイドにゲストキャラが出現する。
(ティオ・クルル・グースケ・キー坊・サビオ等)
今作品は夢の中のキャラをすべて現実の友人や知り合いに当てており、味方側のゲストキャラがいないというイレギュラー。ゆえに、“ノビタニヤン”“ドラモン”など、いつものメンバーがゲストキャラ扱いされるという異例っぷり。

【違和感⑤ ラストシーン】
のび太と静香が夢から覚め、学校へ登校しているシーン。ラストで学校もうつるが、それは山の上にあるという、本来の設定とは違う姿。まるで、お城のようにもみえる。何作も映像化をしてきて、そんなミスをするだろうか、それともこの作品にちなんでギャグ要素として入れただけなのか。それとも、実はまだ夢の中なのか。。
と、みる人によっていろいろな見解もできる意味深な終わり方をしている。

◆◆◆◆

挿入歌で使われ、いまだに非常に高い人気を誇る「夢の人」はいつ聴いても色褪せない名曲。
ここぞという場面で歌詞ありが流れ、しみじみと感動する場面ではメロディアレンジが流れと頻度が多く使われるため、エンドロールの曲は「世界はグーチョキパー」でガラッと雰囲気変えるのは大正解。

夢幻三剣士は映画のなかでも、特に多くの人が考察や意見を交わすことのある映画で、大人も楽しめる作品。
ラスボスの妖霊大帝オドロームは主人公達を死亡においつめたシリーズ通して最も残忍なキャラであり、ドラ作品のなかで一番のび太たちを追い詰めたヴィランだと思う。
なっすん

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