Genichiro

ミリオンダラー・ベイビーのGenichiroのレビュー・感想・評価

ミリオンダラー・ベイビー(2004年製作の映画)
3.5
イーストウッドが異常なバイタリティで映画を撮り続けたので平成生まれの人間も彼の作品に「間に合った」ことを考えると改めてとんでもないと思った、そんな作家はなかなかいない。ゴダールも最後まで撮り続けてはいたがそれなりに映画らしい作品は「アワーミュージック』でひとまず終わってしまったので少し話が違う。『スペースカウボーイ』や『ミスティックリバー』、硫黄島二部作、『チェンジリング』、『グラントリノ』、『インビクタス』…って!すごすぎるわ。2010年代は屈指の珍作・怪作・傑作である『ヒアアフター』で始まる(最高!)。そして、今作。世間的には00年代のイーストウッド円熟期を代表するような作品だろう、アカデミー賞も話題になったし脚本を担当したポール・ハギスの瞬間最大風速も忘れ難い(今何やってるんだろ)。真剣にみた記憶はなかったけど、今作を「なんかすごいなこれ」と思って深夜テレビでぼんやり見た記憶はあった。で、今見返してみると…モーガン・フリーマンが出てくるとヒューマンドラマ然とした雰囲気出るわ、良くも悪くも。モーガン・フリーマンのモノローグは『ショーシャンクの空に』を思い出すから嫌だな。今作は安楽死とスポーツビジネスとしてのボクシングをかなり安易に取り上げている。ほぼMMAしか見ないのでボクシング女子のウェルター級って 66.68キログラム/147ポンドリミットということも知らなかったくらい、だけど今作での描写がおかしいことくらいわかる。相手選手は後ろを向いたヒラリー・スワンクに殴りかかっているがこんなことをしたらライセンス剥奪は間違いないし、その後大きな問題として取り上げられるだろう。そもそも後頭部・頸椎への攻撃は反則。ビジネスとしてかなり整理整頓されているボクシングの現状など別世界かのように描写されている。そして作品としてもほとんど脚本の映画になりかねないような作品だったとは思う。かなりテキパキ進んでいく。手際はいいけど、では今作にしかない映画的な何かがあるのか。それは結局のところイーストウッドとヒラリー・スワンクの存在感、そして二人が同一フレームに収まっている瞬間の輝きしかないだろう。まあそれがあれば十分とも言えるけど…個人的にはイーストウッドベストでもなんでもない作品。だけど00年代にイーストウッドに出会ったのでどうしても記憶に残ってしまった。デンジャーの顛末はとても素晴らしいです。
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