コーカサス

潜行者のコーカサスのレビュー・感想・評価

潜行者(1947年製作の映画)
3.8
“顔のない男”

無実の罪を着せられ投獄されたバリー(ボガート)は脱獄し、謎の女性アイリーン(バコール)の協力のもと、整形手術で顔を変え、真犯人を突き止める。

ボギーとバコール夫妻が共演した4作品『脱出』『三つ数えろ』『潜行者』『キー・ラーゴ』のうちの3作目にあたるフィルム・ノワールだ。

まず驚かされるのは、ボギーが登場するまでの時間だろう。
いや、実際は登場しているのだが、彼の素顔が全く映らないのである。
物語が始まるとキャメラは主人公バリーの目となる、いわゆる“主観映像”で描かれ、整形手術のあとも顔は包帯で一切見えずして…なんとボギーの素顔が映し出されるのは本編がスタートしてから1時間以上を過ぎてからなのだ。

「ボギーの姿が1時間も無いなんて!」
筆者を含めたボギーファンは誰もがそう思うところだが、その不安もバコールの美しさによって完全に払拭される。

ボギーがバコールのために用意したと云われるアイリーン役を、ボギー不在の冒頭から見事に演じた彼女は、当時23歳とは思えないほどのタフ&クールを持ち合わせ、終わってみればバコールの美しさを堪能する映画と思うくらいの堂々とした“主役”ぶりだった。

しかしながら、出番は少なくとも相変わらずボギーのスーツ姿はカッコよく、本作では(モノクロながら) 青い3つボタンのストライプスーツにダブルカフスのYシャツ、ダブルに裾上げされV字スリットの入ったスラックス、そしてお決まりのボルサリーノを着用していることをここに記しておこう。

137 2021