荻昌弘の映画評論

潜行者の荻昌弘の映画評論のネタバレレビュー・内容・結末

潜行者(1947年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 ライタア出身のデルマア・デイヴスが、いかにも、頭でデッチあげました、といいたげなスリリング・メロドラマを作った。
 一人称形式を使って、主役のボガアトを伏せておく手で遊んだり、ドキュメンタリ趣味をとり入れてモノモノしくしたり、なかなか凝った技巧にあふれた映画ではあるが、結局シナリオに独り合点の不自然さがあったために、そんな技巧ではフィクションの御都合のよさをかくしきれなかった形である。アメリカの週刊雑誌を賑わす小説の曲型みたいな、こみいった物語だから、本道からいえば、まず筋の絵解きを主にすべきで、ペダンティクなテクニシャン振りは、あとまわしにすべきだったろう。
 但し、ロウレン・バコオルは、冷たさの中に、湿った甘さが出て魅力的である。
『新映画 7(12)』