アニマル泉

天使のアニマル泉のレビュー・感想・評価

天使(1937年製作の映画)
4.4
20150510シネマヴェーラ
ディートリッヒのあまりの美しさ!妖しい眼差しの神々しいアップ。それは今は失われてしまった白黒映画撮影の完璧な職人技に支えられている。そしてここぞというところでアップで振り返らせる魅せ方。いかに女優を美しく撮るか、ルビッチは教科書です。ダグラスが写真立てに気付いてからディートリッヒに軸を切り替えて2人がどう再会するかまでの一連の場面の絶妙な運びはルビッチの横綱相撲。タバコの吸殻の山や食べ残した皿で心理を視覚化するのはサイレント世代ならではの巧みさ。物語を一気に緊張させるルビッチの演出術も冴えわたる。いつあの想い出のメロディーが響くのか、甘い愛の囁きを反復しながらいつディートリッヒが嘘を認めるのか、そして開けてはいけない扉をマーシャルが開けるか否か。サスペンスの掛け方の上手さはヒッチコックに匹敵する。花売りのおばさんもルビッチらしい。ディートリッヒを探すダグラスを見せないでおばさんの顔で想像させる、しかもおばさんのしたたかさまで描く、この余裕が作品を豊かにする。クライマックスでマーシャルに軸を切り替えてラストに至るまでの演出は本作の最大の謎。
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