ぶみ

いちご白書のぶみのレビュー・感想・評価

いちご白書(1970年製作の映画)
3.0
一九六八年=夏、コロンビア大学、その日、太陽は輝きを失った!

ジェームズ・クネンが上梓した同名のノンフィクション(原題:The Strawberry Statement)を、スチュアート・ハグマン監督、ブルース・デイヴィソン主演により映像化した青春ドラマ。
1968年にコロンビア大学で起きた学園紛争の様子を描く。
原作は未読。
主人公となる大学生をデイヴィソン、キム・ダービー、バッド・コート、ボブ・バラバン等が演じているほか、後から気づいたのだが、生徒会長役として原作者であるクネン自身が登場していたのも見逃せないポイント。
物語は、デイヴィソン演じるごく普通の大学生・サイモンが、学生運動に参加しているダービー演じる女子大生・リンダと仲良くなりたいことから、運動に参加し、徐々にのめりこんでいく姿が描かれるのだが、学生運動と言えば、日本では1960年代末に巻き起こった全共闘運動が思い出されるところではあるものの、それは流石に私の生まれる以前の出来事。
例えば、過去のニュース映像等で流れる、東大の安田講堂を占拠した様子は非常に鮮烈である反面、もはや当時の熱量を知らないため、どこか別の世界で起きたようなイメージでしかないのが正直なところ。
本作品でも、同じく1960年代後半に、コロンビア大学で起きた予備役将校訓練課程校舎建設に対する抗議活動による学部長事務所の占拠事件をベースとして、サイモンとリンダを中心とした大学生の生態が描かれるのだが、やはり、その熱量は相当なもの。
特に、サイモンは、ボート部に在籍する普通の大学生なのだが、リンダと仲良くなりたいがために学生運動に参加していく様は、当時の日本でも同じようなことが起きていたのではないかと想像できるものであり、仮に、当時自分が大学生としてその時代を生きていたとしたら、我関せずを貫けたのか、はたまた活動に傾倒してしまっていたのかは、全く想像ができないところ。
何より、「いちご白書」と言えば、荒井由実作詞・作曲、バンバンによる1975年のヒット曲『いちご白書をもう一度』が真っ先に思い出されるところで、「いつか君といった映画がまた来る」という冒頭のフレーズや、「就職が決まって髪を切ってきた時」といった時代を如実に反映させた歌詞が印象的であり、ずっと、その「いちご白書」とはどんな映画なのか気になっていたので、ようやく念願が叶った次第。
「いちご白書」と言っても、いちごの収穫量や作物の情勢を分析したものでは決してなく、要所要所で流れるバフィ・セント=メリーによる『サークル・ゲーム』の哀愁漂うメロディーや、終盤に皆で歌うジョン・レノンがプラスティック・オノ・バンド名義で発表した『平和を我等に』(原題:Give Peace a Chance)が鑑賞後にも頭の中で響き渡り、サイモンが映し出されるラストカットが強烈なイメージを放っているとともに、前述のように、私の念願を叶えてくれたNHK BS放送に感謝したい一作。

すでに賢い者であっても、生きて学ぶことは恥ではない。
ぶみ

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