ウディ・アレン監督、脚本による家族を描いた人間ドラマ。
弁護士のアーサーと、インテリアデザイナーのイヴは経済的に裕福な夫婦で、3人の娘は皆自立している。長女レナータは詩人として成功し、娘にも恵まれたが、売れない作家の夫フレデリックとはぎくしゃくしている。仕事を転々としている次女のジョーイは、政治評論家の夫マイクと都心のアパートで二人暮らし。端役ばかりの女優で三女のフリンは、家族と距離を置くように遠方で暮らしている。ある日の娘たちとの朝食の席。アーサーはイヴの目の前で、十分責務は果たしたと別居を提案。取り乱したイヴは家を出るのだが…。
ウディ・アレン作品とは思えないような、笑いのない冷静で客観的な視点から描く女性映画。音楽なし、白、青、グレーのモノトーン調の映像、無駄なものは全て削ぎ落としたかのような作りです。まるで自らの職業、インテリアをデザインするかのように、完璧主義の世界で家族を支配してきたイヴが強烈。母の期待に応えようとする姉妹は、嫉妬や羨望が入り混じったまま、歪んだ関係。夫は窮屈な支配から逃れたかったのか、まるで真逆なタイプの女性に惹かれていく。迎える家庭崩壊と、イヴが選択する結末が、悲劇なのにどこか潔さを感じさせる、芸術的な世界観になってます。
群像劇なので、演技合戦も見どころですが、やはりイヴを演じたジェラルディン・ペイジが素晴らしい。こんな母親絶対嫌だ!と思わせる高飛車で神経質な役作りが凄いです。対照的な豪快マダムを演じたモーリン・ステイプルトンは陽気な芝居が楽しい。アレンの恋人だったダイアン・キートンと、当時ウィリアム・ハート夫人のメアリー・ベス・ハートは不仲な姉妹で激突。どちらも対抗心丸出しの熱演で見応えあります。