たにたに

ニュールンベルグ裁判のたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

ニュールンベルグ裁判(1961年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

【迫真の法廷劇】2023年8本目

見事な法廷劇すぎて3時間があっという間でした。終わった後自然と拍手を送ってしまいました。


連合国がナチスドイツの戦争犯罪を断罪した軍事裁判。

裁判長はアメリカの地方判事ダン・ヘイウッド。被告は著名な法律学者であり、裁判長や判事としてナチスの断種法にのっとって行われた裁判について関わった人物達。
検事はアメリカの大佐タッド・ローソン。
弁護士はロルフ。


飲み込まれてしまいそうなほどに重いテーマを扱う今作は、時に目を塞ぎたくなるような過激な映像描写を交えながら、非常に丁寧に攻防戦が繰り広げられる法廷劇。


ナチスの非道な行為に対して事実と写真を交えながら追求するアメリカの検事に対して、弁護士のロルフは論理的に物事を把握し、問題の根源は自己保守に走らねば自分の身も危ないのだという人間の本能と、ヒトラーによって突き進められたユダヤ人大量殺人について知らされていなかったという罪の意識の不在を主張する。

さらに参考人への質疑においては、心情を動かすような巧みな独断場へと持っていき、視聴する我々もまた彼の発言に納得させられそうになるという恐怖体験を得るのである。

「野ウサギ 狩人 野原」という三つの単語を使って文章を作れますか?
と、執拗に迫る彼の姿。
ほらみろ!彼は精神障害者なのだ!
断種法に反していない!と行ってきたことへの正当性を主張する。

法律に基づいて実行されたかが争点となっているが、その法自体がおかしいと感じながらも、それに従ってきた法律家たちに罪の意識があるならばそれは問題なのである。


"責任の意味"というキーワードが出てくる。法律家として正しい方向へと導く責任があるが、その法律に基づいて厳しく判を押すことも責任である。

法というのは人々を守るために存在するはずなのに、その人々に非道な区別が存在してはいけないのである。


暫く沈黙を続けていた被告の1人であるヤニングは、ロルフの参考人に対する追い詰め方や弁護のやり方に対してふつふつと違和感を覚え、自らの罪を自白するシーンには、計り知れない覚悟を感じ、大きく心を動かされた。



最終判決の日。アメリカのダン判事は彼らに無期懲役を突きつけた。

終了後、ヤニングに呼ばれたダンが発言した言葉が忘れられない。
「あなたが、無罪と知りながら死刑判決をしたのがはじまりですよ。」と。
ダン自身はヤニングの心情を汲み取りながら、死刑判決を下さなかった。
正義を掲げて暴力に走ってはならないのである。とでも言うかのように。。
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