チッコーネ

愛の化石のチッコーネのレビュー・感想・評価

愛の化石(1970年製作の映画)
2.0
要所での『大女優アピール』が気になる浅丘ルリ子。
「ではこの人の代表作って?」と鑑賞作を振り返ると、やはり『夜明けのうた』に尽きる気がする。
演技というより「地で演ってます」という内容だったが、フランス映画風のポップな軽さと、調子づいて何をしでかすかわからないキューティなキャラクターが、見事にマッチした傑作であった。

さて本作は『夜明けのうた』の路線を引き継ぐ「オレオレならぬアタクシ映画」で、重ねた年齢を考慮したのかよろめき要素が加味されている。
彼女の役どころは「性別と見た目を買われ、でっち上げられたトリック・スター」。
相手役に「君が今までいかに甘ったれた世界にいたのか云々」という台詞まで投げつけられていた。
こうした設定に対し、彼女が作品内で何らリベンジを果たさないまま終わるのが、何とも歯痒い。
女性蔑視かと疑いたくなる脚本の中途半端さ、この時代の映画としては問題だと思うし、一歩踏み込んで作風に物申すところまでやってこそ、大女優の面目躍如だと思うのだが…、つまりその程度なのだよね。

撮影は結構おしゃれ。
また70年代以降はリアリズムに寄って、どんどん貧乏臭くなる邦画にはない舞台美術も散見された。