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抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-のstanleyk2001のレビュー・感想・評価

4.2
『抵抗-死刑囚の手記より-』
Un condamné à mort s'est échappé (sous-titré ou Le vent souffle où il veut)
「死刑囚は逃げた」あるいは「風は己の望む所に吹く」
1956フランス

1940年5月ナチス・ドイツはベネルクス三国に侵攻。フランス共和国は応戦したがナチスに敗れた。追い込まれたフランスとイギリス軍はダンケルク海岸から撤退した(『ダンケルク』)

敗れたフランス共和国のペタン元帥はナチスと講和を結び地名にちなんで「ヴィシー政権」が成立した。ナチスと徹底抗戦を主張するド・ゴール准将はイギリスにに亡命して「自由フランス」を作った。

傀儡政権とも呼ばれるヴィシー政権はナチスに協力して労働力を提供し警察を使ってユダヤ人を強制収容した(『サラの瞳』)

ナチスに従うことをよしとしない人々はレジスタンスに加わった。

『抵抗』の主人公もその一人。ファーストカットで主人公フォンテーヌはすでに逮捕されてナチスの自動車の後部座席に座っている。隣に座っている男には手錠がかけられているが手錠が足りなかったのかフォンテーヌには手錠が掛けられていない。

フォンテーヌは自動車が速度を落とした時にドアを開けて逃れる。

しかし囚われてまた車に乗せられて手錠をかけられてモンリュック刑務所に収監される。

タイトルにあるように死刑宣告されたフォンテーヌは脱獄する。

ストーリーはシンプル。フォンテーヌのナレーションもあってほかのブレッソンの映画と比べると分かりやすい。サスペンスに満ちていてとても面白い。

実話に基づいているのでリアリティがある。

カメラは風景を俯瞰したりしない。フォンテーヌたちを画面の中に捉えて閉塞感を出す。

手のアップを多用して緊張感を出している。

フォンテーヌたちは犯罪者では無い。ナチスは犯罪者と決めつけたけど。敵軍の捕虜になった自由フランス軍の兵士だ。捕虜は脱獄することで第五列(敵軍のバックヤード)を混乱させる任務がある。

フォンテーヌの脱獄の意思は変わらないが中には脱獄を諦める者もいる。

監督ロベール・ブレッソンもナチスの捕虜になって収監されたが病気になって解放された経験を持つ。

経験した人たちが出せるリアリティが凄い。特に刑務所の外から聞こえる色々な音。車が走る音、列車の音。

街中にある刑務所ならではだ。

張り詰めた緊張感に満ちたサスペンス映画。しかしブレッソンはのちに作ったロバを主人公にした『バルタザールどこへ行く』を一番好きなように作った映画だと語った。

実際にナチスに捕まって死にかけたブレッソンが何を考え人生をどう捉えていたのか。もっと色々知りたいと思った。
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