聖歌団長を務めている中年の司祭が、教え子の少女を恋慕するあまり、婚約相手となる甥を殺害してしまう。司祭の恋狂いと完全犯罪を描いている、クライム・サスペンス。
いわゆる「聖者が悪いことをしていました」系の犯罪劇。町人たちから信頼を得ている司祭が、"片思い相手の婚約者となる甥"、"甥の恋敵となる青年"の合間にこっそりと入り込み、保身のためのスッタモンダを繰り広げる。
恋に狂い始めていることを自覚している司祭が、逃避行動の一環として阿片窟に出入りするところが面白い。犯行後、ボロが出てしまうことが分かりきっているのに、阿片窟に逃げ込む。そして、司祭の関与しないうちに、真相究明の連鎖が動き出す。
「あー、こいつ自分を見失っているなー」という、司祭のダメダメぶりを楽しむための作品。男子禁制の寄宿舎で暮らしている女性陣のコスチューム・プレイが見目麗しく、「多羅尾伴内」的なクライマックスにケレンミが備わっている。