半兵衛

幻しの合唱の半兵衛のレビュー・感想・評価

幻しの合唱(1935年製作の映画)
3.0
『クリスマス・キャロル』などで知られるチャールズ・ディケンズの遺作『エドウィン・ドルードの謎』を映像化したミステリー仕立てのドラマ、ちなみに原作は執筆途中で作者が死去して未完になっており犯人やオチは製作者独自の解釈で付け加えられている。

神に仕える司祭が年甲斐もなく若い女性に惚れてしまい、彼女を自分のものにするために婚約者である甥を殺害してその罪を彼と対立していた男性に着せるという流れで、いわれのない濡れ衣を着せられその真相を突き止めるため老人に変装して調査する青年のエピソードが後半メインとなり事件の発覚を防ぐため関係者を殺したりする司祭とのやりとりがサスペンスを生み意外としっかりとした作りになっている。

ただ全体的には惚れた女性にはずっと袖にされ、周囲からはその慎み深い仕事と歌声で評価されていても自分の真の性格を誰も理解していないことにストレスを感じてアヘンに溺れる司祭の悲哀に満ちた中年男の心情が演じるクロード・レインズの熱演もアイツが切々と描かれており、きっとある程度の年齢まで行った人間ならば仕事で誉められる自分のと自分の本来の性格とのギャップに悩まされる彼の姿は共感できるはず。

ラストは神に尽くしても報われない男の結末として味わいがある。あと女性との接触が若い頃少ないとこじらせるなあと改めて痛感。

貧しい子供など最下層の人間の描写がディケンズらしい。
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