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ミッションのotomisanのレビュー・感想・評価

ミッション(1986年製作の映画)
4.1
 討伐軍の銃撃に倒れるデ・ニーロ神父が身をよじって見つめる先では非戦のアイアンズ神父が弾雨に怯みもせずに教会を後にする。デ・ニーロ神父はそのとき奇跡が起こる事を望んだろう。信徒らを率いた神父が皆と共に遂に倒れ、それを見届けるようにデ・ニーロ神父も息絶える。が、やがてアイアンズ神父の持ち物を子どもの一人が拾い上げ、彼等生き残った者たちで森へと進んでゆく。
 教皇と王たちの手打ちで決まった伝道所からの追放に反発した彼らが教会と袂を分かっても信仰はなくなるだろうか?隠れキリシタンのように孤立を求めながらカトリックの教義の影も形も失い、祈りの言葉の意味さえ忘れられながらもデ・ニーロ、アイアンズ等を伝説の大呪術師と語り継ぐようになるだろうか。それともグァラニー族の倣いである楽園を求める大移動の末、どこかの土地でメスチソ化して伝承も混沌としてゆくのだろうか。
 デ・ニーロ神父の笑顔も辛苦の末に大滝の上の地でアイアンズと彼らが刻み込んだことを伝承者たちは誰も気づくまい。その昔、彼が人殺しの人狩り人であったことも誰に記憶されるだろうか。ただ、今も辺境でわずかに暮らす直系の人々の間で聖遺物とされたバイオリンと共に誰かの名前が伝わっているとしたら、これは一つの夢に過ぎないが。
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