ボブおじさん

ミッションのボブおじさんのレビュー・感想・評価

ミッション(1986年製作の映画)
4.1
監督のローランド・ジョフィと言えば1984年のデビュー作「キリング・フィールド」で強烈なインパクトを受けたことを覚えている。内乱渦巻くカンボジアを舞台に、アメリカ人記者と現地人助手の絆を力強く描いた作品だ。

そのローランド・ジョフィ監督が次回作として作ったのがこの作品で、ジャケ写にもある有名な滝のシーンが本物の人間ではないかと当時話題となった😅

1750年、ローマ法王の元、キリスト教の教えを世界全土に広めるために設立されたイエズス会の神父ガブリエル(ジェレミー・アイアンズ)は、南米奥地のパラナ川上流、イグアスの滝にやってくる。彼は滝の上の土地に住むインディオ達に神の教えを伝道するため、そそり立つ滝を這い上がり、決死の覚悟の末、深い信頼を得る。

一方、村へ人狩りに来ていた奴隷商人メンドーサ(ロバート・デ・ニーロ)は、弟を殺した罪を償うためにガブリエル神父とともに伝道に参加、自らに難業苦行を課し、インディオ達に近づいていく。

困難を極める布教活動の中、ガブリエルはひとり森林に分け入り、神への賛美の曲を自らのオーボエで奏でる。その音色に惹かれ、警戒しながらも少しずつガブリエルに近づくインディオ達……。

やがて音楽は言葉や信仰の壁を越え、両者を結びつけ、ジャングルに〝賛美の教会〟が建てられる。エンニオ・モリコーネによるこの音楽〝ガブリエルのオーボエ〟は、モリコーネが自らの最高傑作のひとつと語る通り、その壮大な音色は映像と一体となり確実にこの映画の格を上げている。

イグアスの滝を無言で登っていくデ・ニーロの表現力は筆舌に尽くし難く、南米の大自然を背景に描かれた天国が、いつしか人の手により地獄へと変わっていく。それらの描写を美しい音楽と共に神の視点から描いた名作だ。



〈余談ですが〉
◆音楽が映画と密接につながっていることは、今更説明する必要もないだろう。映画と音楽の関係性をより深く理解したい方は、本作についても触れている「モリコーネ 映画が恋した音楽家」を是非ご覧いただきたい。
本作はモリコーネが〝マカロニ・ウエスタン〟の作曲家から映画音楽の巨匠へと世界的名声を得るきっかけにもなった作品であることが理解できる。

◆監督のローランド・ジョフィは、デビュー作の「キリング・フィールド」で全世界に衝撃を与え、2作目の本作で見事にパルム・ドールを受賞した。そして3作目にメガホンを握ったのが「シャドー・メーカーズ」。今話題の「オッペンハイマー」を別の視点から描き、再び注目を浴びている作品だ。

◆ ミッション(mission)には、
①〝使命・役割・任務〟といった意味と
②〝キリスト教の伝道・布教・宣教〟という意味があり、語源的には②が先。
「ミッション・インポッシブル」は①
「ミッション・スクール」は②の意味だ。
本作の原題「THE MISSION」は当然②を意味している😊