Foufou

ミッションのFoufouのレビュー・感想・評価

ミッション(1986年製作の映画)
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久々に史劇大作を鑑賞。デビッド・リーンの『アラビアのロレンス』やフランシス・コッポラの『地獄の黙示録』、そしてマイケル・チミノの『天国の門』などを私なんかは想起します。作家性というか目の付け所はチミノに近い気がいたしますけど、どうでしょう。全編に亘ってイグアスの瀑布の轟音が鳴り響いておりましてね、大自然に比して人間が小さく小さく撮られている。ディナーショーにでも行く感覚で正装して映画館を訪れる時代があったとすれば、まさにそこでかかるような映画です。

しかし話型は、黒澤明の『七人の侍』と同じ。その悲劇性も含めてね。だから西洋の相対化という重要なテーマを扱っていながら内実はエンタメなんです。

この頃のデ・ニーロは、映画に文芸大作という箔をつける顔をしていましたね。ベルトルッチの『1900』やチミノの『ディア・ハンター』の彼です。本作では、西洋の贖罪(あるいは良心)を体現するような極めてサンボリックな役柄を演じていらっしゃいました。カインとアベルのカインだし。ただ、演出が先の二作に比べていかにも弱い。この辺が『キリング・フィールド』の監督の限界なのかもしれない。

それにしてもヨーロッパの人間というのは恐ろしいですね。いきなり地球の裏側までやってきて、「悔い改めよ」ですからね。悔い改めなければ地獄に落ちると脅し、悔い改めたら改めたで先住民を帝国主義の奴隷にしていく。聖書の教えはどこへやら。てか、君たちが海を渡りさえしなければ、世界は平和だったんじゃなかろうか。なにしてくれてんの……と映画を見て憮然とする次第。

今見ると、なかなか評価しにくい映画なんじゃなかろうか。皮肉の矛先はベトナムに介入したアメリカにまで及んでいる。欧米=覇権主義の恩恵をこうむる人々にとっては、バツの悪い映画でしょうね。
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