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書見機のTnTのネタバレレビュー・内容・結末

書見機(1977年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

 本の虫の寺山修司らしい作品。いつも思うが自伝的なものも別に自己満足的という風には見えない。他の作家がよくする自己弁護的な要素が少ないのと、所詮は本の虫らしい引用の賜物として出来上がった世界だからか、本人自体をそこにあまり見出せない。

 本を愛しすぎて、世界で一番大きい書物に憧れる。白い紙に黒い印字、それを表すように画面もグレーの階調が消え、白と黒に振り切っている。露光が変わると見え方が変わる面白さがふんだんに使われてて、暴かれる闇の面白さがある。本に騙され(立体だと思ったら平面じゃないか!)、字にバツを書いていき、最終的に本を焼く。愛憎がある。

 自動本読機。今のスマホで本が読めるという行為は、この時代からしたら味気ないものに感じる。憎を向ける対象が消えてくこと、否定の先に見る新たな可能性の無さ。嫌いなページを破り捨てる自由だって個人レベルじゃあっていいと思う。時計の破壊も今となっては無意味だよな。「世界から書物が消えてなくなる日」は近いのだろうか。というより、今作自体が自動でページが捲られる書見機なのではないか。絵の延長の映画ではなく、本の延長の映画という点で再びゴダールあたりに接近する。
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