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亡霊怪猫屋敷のmitakosamaのレビュー・感想・評価

亡霊怪猫屋敷(1958年製作の映画)
4.1
やはり中川信夫は凄い。なんてロジカルに映画を作るんだろう。
いわゆる怪猫ものだが、大映じゃなく珍しい新東宝によるもの。ゆえに作風も大きく違う。
まず現代劇と時代劇の2パート構成になってる。
まず現代の話で、結核の妻の療養の為に田舎に引っ越してきた医者。
その屋敷で謎の老婆に襲われ怯える妻。
理由ない恐怖。番犬も殺されちゃう。
旦那の声に騙され雨戸を開けてしまう、なんてシチュエーションもある。これは雨月物語の吉備津の釜の引用だね。
最新は信じなかった旦那とゆかりのお寺に話を聞きに行く。

と、ここで過去の因縁話が始まり、時代劇に移る。
驚くことに、今までの現代劇がモノクロで、時代劇でカラーに変わるんだよ!
凄い斬新な演出!まだ逆なら理解できるけど、過去の話を映像を鮮明にさせる、というもの。60年近く前によくこんな演出やった、と感心する。

多少の差異はあるけど、基本は有馬猫の話に準じてる。
家老が、囲碁に負けた相手を斬り殺しちゃう。母も後を追い自殺。怪猫が化けて呪って仇をうつ、というもの。
この辺の演出は大映の化け猫ものの流れを汲んでる。

ただとても現代的なんだ。
“怪談”と“ホラー”の最大の違いは、“遺恨”か“理不尽”か、だと思ってる。
怪談とは、人から怨まれる事をした悪人が呪われ痛い目に合う、というモノ。
ホラーとは、恨まれる筋合いの無い人が運悪く理不尽な目に合う、というもの。

時代劇編では、正に怪談劇が繰り広げられるけど、現代編では遺恨の子孫が怖い目に合う。当人は何も悪くないのにご先祖様のせいで怖い思いする。とても現代的なホラーの構造にある。
今作は言わば、怪談とホラーの融合なんだよね。本来は相容れない二つなのに。

そしてオープニングにあった前振りが、本編を通してラストに回収される。
怖さと生々しさを見せつけて、ラストに清涼感ある爽やかな終わり方。上手い!

Jホラーブームなんかのずーっと前にこんな映画があること自体が奇跡的。
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